私の好きなアルバム紹介
黄妃『黄妃』
CD1 01.追追追 02.紅燈酒館 03.痴情花 04.[虫胡]蝶乱飛 05.不甘[イ尓]走 06.純情少年家 07.慢来的春天 08.風塊哭 09.[勿愛]問阮的名 10.I LOVE YOU |
CD2 01.非常女 |
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滾石国際有限公司所属 魔岩唱片発行、2000年 |
台語歌謡は保守的というイメージを持たれる方もいるかも知れません。でも私が見る限り従来の台語歌謡の殻を破ろうと挑戦したアルバムは結構あるように感じています。ここで紹介する黄妃『黄妃』は まさしくそうで、見事に成功した例だといっていいでしょう。 ‘台湾歌姫之非常女’と銘打ったこのアルバム聞いてみれば、まず音が出るなり、CHINA BLUEなど気鋭の編曲家を起用した斬新な編曲に誰もが驚かれることでしょう。それ以上に黄妃の幼さは残こるものの、美しくも冴えた歌声には最初の一声から釘付けになるに違いありません。 今回紹介する『黄妃』は成功した例ではあるが、実際には成功したとはいい難いアルバムも少なくないように思われます。従来からの台語曲のよさを残しながらも、その中に斬新さというものを打ち出さないいけないので容易ではないのは確かだ。単にサウンド面だけに他のジャンルの音楽を取り入れても、従来からの台語ファンにそっぽを向かれたのでは成功とはいえないし、それを歌う歌手の実力も伴わないといけないのは当然であろう。でも『黄妃』は斬新な欧米系のサウンドを取り入れていながら、台語曲としてまったく違和感がないのである。不思議なくらいである。突然変異なのか? いずれにしても『黄妃』は従来の台語アルバムとは一線を画す素晴らしい出来のアルバムであることは確かである。 新時代を切り開く台語アルバムとして、これほど成功しているアルバムはそうはざらにはなく、歌手黄妃はこの先どう展開していくのか?少し心配でもある。それほどまでに素晴らしいアルバムが出来てしまったからである。 以下、各曲順を追って聞いた印象を簡単に書いてみました。 「追追追」は何か物語が始まるかのようなイントロ、期待感が高まる。そこにやや幼い感じではあるが、とても印象的な黄妃の歌声、少し語り的な歌が始まる。途中からテンポをぐっと早め、強いリズムを伴った伴奏の快適な歌は実に痛快かつ鮮やかである。少し幼い感じでの声ではあるが、歯切れのいい歌がかなり強烈にぐいぐい引っ張る。初めて聞いた人なら誰でも驚くに違いありません。コーダなしに一気に終わる。この曲はこのアルバムはこんな感じだと言わんばかりの強烈な序曲でもあるといえよう。 「紅燈酒館」は印象的なトレモロで始まるイントロは台語曲としては異色、やさしく、美しい声が強烈なまでに印象的である。特に高い声が美しく驚くほどだ。クライマックスは大きく盛り上がる。 「痴情花」は一転して、アップテンポでリズミカルなイントロで始まり、青春歌謡みたいなイントロに聞こえなくもない。歌のほうもアップテンポでリズミカルである。かなり起伏が大きい歌で、クライマックスの盛り上がりも大きい。 「[虫胡]蝶乱飛」はスローな低音で始まる。初めの部分は思い入れたっぷりな歌である。徐々に盛り上がりを見せ、クライマックスはかなり劇的ですらあります。 「不甘[イ尓]走」はやや甘ったるさのある声でささやくように歌い始める。間奏は華やかなメロディで演奏は鮮やかなまでに効果的である。後半部分の歌のパートは難度が高そうですが、伸びのいい高音と鮮やかなテクニックで見事に歌いこなしています。 「純情少年家」は始まりはややスローでささやく感じである。次第に歌謡風のメロディになっていくが、 幼い感じの高い声の魅力が存分に発揮されている。途中からのピアノを伴った伴奏による味付けは大変効果的である。 「慢来的春天」はピアノを伴った静かなイントロで始まる。静かにやさしく、ゆっくりと歌い始めるバラードである。後半はテンポを早め高音主体になる。歌謡的なメロディも顔をのぞかせる。高音部では声の美しさが際立っていて大変魅力的である。 「風塊哭」は一瞬の雑踏の後、突然独特の強烈なリズムのイントロ、最後まで一貫して強烈なリズムの伴奏である。歌のほうはというと随所に裏声っぽい高音が目覚しい活躍をしている。これは黄妃ならではで、とても魅力的だ。 「[勿愛]問阮的名」は独特のうねりのあるリズムと適度にアクセントのある歌い方は異色、高い声の美しさが印象的である。 「I LOVE YOU」は静かでややスローなバラード風である。フレーズ毎に微妙に雰囲気を変えた歌い方が印象的である。 実はこのアルバムは2枚組です。以上で1枚目は完結している。もう1枚には「非常女」一曲のみ収録されています。原曲が「北寒港」ということであるが、1枚目ほどの魅力は感じられない。何かの実験をしようとしている? |