私の好きなアルバム紹介

李嘉『李嘉的新台語歌・温柔的慈悲』

01.做人照歩來
02.人生若扮戯
03.温柔的慈悲
04.さらば這條歌
05.少女心
06.等待是藝術
07.真情無愛甲人公家 
08.迷航的探戈
09.春夢打醒
10.無情網
天王企業出版発行、1993年
私が李嘉のアルバムで最初に聞いたのが『天使語録』です。もちろんそのアルバムも素晴らしい出来で、彼女の歌も申し分ないものでした。しかし、天使のような清らかな声である反面、やや線の細いところのある歌手で他のアルバムははたして?という若干の懸念もありました。他のアルバムを聞くにつれて、その懸念は徐々に払拭されていき、今回の『温柔的慈悲』を聞くに及んで完全に消えました。
『温柔的慈悲』のジャケット写真を見ると真っ黒な背景で、それまでのものとは違い大人っぽい雰囲気があります。しかし、1993年3月の発行だから、まだ16歳の若さで歌のほうも年齢相応のものといえます。
まず「做人照歩來」ですが、中視[門<虫]南連続劇‘阿弥陀仏’片頭曲で、流れるような美しい曲調である。アルバム全体を通していえることでもあるが、この曲も彼女は美しい声で、どこにも誇張がない素直な歌で大変魅力的です。
「人生若扮戯」も同じく、中視[門<虫]南連続劇‘阿弥陀仏’片頭曲です。「做人照歩來」よりはメリハリのある曲調で、彼女もそれに合わせリズミカルさを持たせ歌っています。
「温柔的慈悲」は一転して静かな曲調で、ほんのりとした哀調を含んでいます。ややゆっくり目の曲調ですが、彼女はこういいう曲調も間延びすることなく無難に聞かせてくれます。
「さらば這條歌」は‘さらば’という平仮名を含むという面白いタイトルです。歌の中にも‘さらば’という詞があり日本語で歌われています。いくぶん語り口調の歌のようにも聞こえます。
「少女心」は明るく、愛らしい雰囲気に溢れる歌で、当時の年齢にぴったりのあどけなさも感じられ、
若い彼女ならではの魅力が存分に発揮されています。
「等待是藝術」は明るく弾むようなメリハリのある曲調です。たぶん‘じっと待つのは芸術’といった意味合いの面白いタイトルかと思います。途中で歌詞に‘すみません’という日本語が入っているところも面白い。こういう曲調は彼女にぴったりで歌っている彼女の楽しそうな姿が目に浮かんでくるようだ。
「真情無愛甲人公家」ですが、ややポップな曲調で、途中からはそうではないが序盤はやや平板な印象の曲調です。歌は無難にこなしているといえるが、曲としての魅力はやや落ちるという印象は否めません。
「迷航的探戈」は、もちろんタンゴのリズムですが、曲調はやや起伏が大きいが、彼女の声はスムーズに出ています。
「春夢打醒」は曲調としては起伏が大きく、広い声域を要求していて、こういう難しい曲も彼女は無難にこなしていて、まったく破綻を見せません。李嘉の歌手としての力量は意外に高いのではないかと思われます。
「無情網」ですが、曲は明るく弾むようで、リズムも心地よい。彼女が持っている天性のリズムとぴったり一致しているように思われる。それだけにすべての面で素晴らしく、これ以上何も言うことはない。これほどの出来栄えの歌に出会うことはそうめったにありません。
このアルバムの出来は素晴らしいのでいい歌が多いが、中でも私が特に好きなものを選べば、「做人照歩來」、「少女心」、「等待是藝術」、「無情網」といったところでしょう。


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