私の好きなアルバム紹介
小萍萍『雅歌萍韻』
01.南屏晩鐘 02.香格里拉 03.不如歸去 04.夜来香 05.情人的眼涙 06.夢里相思 07.愛的苦酒 08.蘇州河邊 09.第二春 10.秋的懐念 |
11.相思河畔 12.情難守 |
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雅歌唱片制作(マレーシア、1994年) |
小萍萍の『雅歌萍韻』は時代曲のアルバムです。時代曲とは古い曲を指すのであるが、それに対し新しい曲は現代流行曲といい、[登β]麗君以降を現代流行曲、それ以前の曲を時代曲と区分されているようである。 『雅歌萍韻』は時代曲の中でもスタンダードといっていい曲を中心に集められています。それだけに過去多くの歌手に歌い継がれてきたものばかりです。そういった中にあって私が屈指の出来だと思っている時代曲集が小萍萍の『雅歌萍韻』というわけです。 このアルバムは彼女がデビュー以来所属していた銀城を離れ、雅歌に移籍後初めて出したものですが、歌手として最も充実していた頃の歌が聞けます。小萍萍といえば、それまで山地情歌を除いては福建語の歌を主に歌っていたので福建語専門の歌手というイメージがあるが、この『雅歌萍韻』は華語です。元来華語の素養もあるのか、それにしても見事にこなしています。 次に各曲を聞いた印象を簡単に述べてみたいと思います。 「南屏晩鐘」はこの歌手のキー、リズム、テンポに合っているのか、全体的にまとまった安定した歌唱といえます。ある意味バランス感覚に優れ平均点が高く模範的ともいえる歌です。 「香格里拉」も多くの歌手が過去に歌ってきたが、どうもあまりぱっとしたものがない曲である。もちろん卓依[女亭]も歌っているが、ここは小萍萍に軍配を挙げざるをえない。このアルバムの中では感心した曲の一つといえ、この曲としては屈指の出来といえる。リズムはやや強調ぎみぐらいの生きのいいバックであるが、彼女の歌もそれに見事に乗っている。やや口に含んだような歌唱は見事だし、引き延ばす箇所の裏声っぽい綺麗な発声は何度聞いてもいいものである。とにかく素晴らしい出来である。 「不如歸去」はテナーで始まるイントロで、それだけ聞くといかにも数10年前の日本の曲という雰囲気である。多分曲は日本のものとは違うんだなとは思う。振幅を大きく取ったゆとりのある力強い歌唱は素晴らしい。途中低音が連続する難しい箇所のある曲ではあるが、そこは苦しいながらも無難にこなしていると思う。 「夜来香」は日本でもよく知られているバラード風の曲で、やや抑えぎみの歌で始まり、途中からぐっと盛り上げて歌っている。彼女なりのよさはそれなりに生かされているが、いい出来の曲が多いのでアルバム全体からみれば並みに聞こえてしまう。それでも一般的な水準は十分にカバーしていると思う。 「情人的眼涙」は曲自体が散漫なせいか、彼女のよさがいまいち生きていないのが惜しい。小萍萍という歌手は、振幅が大きく、適度に抑揚感がある曲が得意なように思われる。そういった意味でも、この曲はあまり得意でなさそうで、このアルバムの中では劣る出来だと思う。 「夢里相思」は、ともすれば歌のほうはつまらなくなりそうな曲のように思われる。それでも彼女はうまく盛り上げている。感情移入はやや過多な感じはするが無難にこなしていると思う。 「愛的苦酒」は適度に振幅とアクセントがあり、この歌手に合った曲だといえる。それだけに技巧的にも鮮やかな歌唱だといえる。もう少し感情移入を抑制したほうがいい感じはするが、全体的にはこの歌手のよさが十分に生かされた素晴らしい出来だと思う。 「蘇州河邊」は全体的にやや平板な感じがあり、この歌手にはどうかなという部分のある曲ではあるが、彼女は滑らかに歌っていて、これといった破綻はみせていない。でもやや魅力に劣る感じは否めない。途中男性歌手の歌も入ります。 「第二春」は「不如歸去」や「愛的苦酒」などと同様に小萍萍向きの曲といえる。この歌手のリズムに合っている。裏声も大変綺麗で実に生き生きとしている。全体的に抑揚感が素晴らしい歌手ではあるが、この曲はそれがどんぴしゃりツボにはまっている感じで、何も言うことはない。文句なしの出来だ。どれほど繰り返して聞いたかわからないほどである。 「秋的懐念」は何となくチャチャっぽい不思議なリズムのアレンジである。フレーズごとに細かく抑揚感を持たせた歌い方は、この歌手ならではの独特の歌い方のようでもありコミカルな感じもある。 「相思河畔」は「夜来香」と同様に中国風の軽やかなメロディの曲、全体的には可もなく不可もなくといった感じではあるが、他の歌手とは違いこの歌手ならではの強いキャラクターはこの曲でも健在である。 「情難守」は、いかにも数10年前の日本の曲といった感じである。そうはいっても曲名はわからない。 適度な抑揚感があり、力強さもある鮮やかな技巧が随所に光っている。とにかく素晴らしい出来である。 全体的な印象としては、概してこの歌手に合った選曲がされているように思われる。それがこのアルバムが成功している要因と思う。出来のいい曲が多いが、中でも特に素晴らしいと思うのが、「香格里拉」、「愛的苦酒」、「第二春」、「情難守」です。 |
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卓依[女亭]新在線
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